From:台湾 降ろされた「国旗」


 23日、中国からプレゼントされた2頭のジャイアントパンダ「団団」と「円円」が台北市立動物園に到着したが、入園直前に奇妙な事が起きた。正門に掲げられていた台湾の「国旗」に当たる「青天白日満地紅旗」が突然、降ろされたのだ。

 同動物園は「前日に雨が降ってぬれ、乾かすために降ろした」と説明したが、不自然さはぬぐえない。パンダの台湾入りの模様は中国メディアが同時中継していた。台湾メディアは、動物園側が旗がテレビに映らないように中国側に配慮したと疑いの目を向けている。

 中台融和を掲げ、今年5月に発足した国民党の馬英九政権は中台交流拡大を進めてきた。今月15日には中台間を結ぶ初めての海運直航貨物便や直行 チャーター便、直接の郵便輸送が解禁され、長年の懸案だった「3通」(中台間の直接の通信、通商、通航)が事実上、スタートした。

 中台の交渉の過程では台湾側の中国への気遣いが目立った。一例は「3通」解禁を決めた11月初めの中台の窓口機関のトップ会談の日程だ。

 中国側の陳雲林・海峡両岸関係協会会長は11月3日から7日まで台北を訪問したが、米大統領選投票(11月4日)をはさむ日程には当初、疑問を感じた。世界の注目が米国に向かい、中台融和の演出効果が薄まるからだ。

 10月下旬開催の観測もあったが、台湾東呉大学の羅致政・政治学科主任(准教授)は「それはありえなかった」と解説する。辛亥革命(1911年)を記念する10月10日の双十節があるため、10月中は台北の街中に「青天白日満地紅旗」が飾られるためだ。

 さらに11月下旬にはペルーでアジア太平洋経済協力会議(APEC)が控えていた。この場を中台融和の舞台とするために、11月上旬のトップ会談日程が組まれたという。APECでは連戦・元国民党主席(元副総統)が台湾代表として初めて中国の胡錦濤国家主席と会談した。

 しかし、中国に配慮し、旗1本の掲揚にすら神経質になる馬英九政権に独立志向の強い野党・民進党と支持者は不満を募らせる。

 民進党支持者は歴史的に国民党の党章である「青天白日」がデザインされた「青天白日満地紅旗」を嫌ってきたが、動物園の一件では、民進党台北市議 が園側に「なぜ、降ろしたのか」と詰め寄った。陳会長の来台の際にも、民進党支持者がこれ見よがしに「青天白日満地紅旗」を掲げ、馬政権に抗議した。

 「3通」解禁で中台間の物理的距離は縮まることになる。しかし、感情的な距離は相当な開きがある。配慮や気遣いを必要とする交流は窮屈そうにみえ るし、台湾内部の不満を蓄積させることにもつながりかねない。09年は中台分断から60年を迎えるが、交流の行方はなお楽観できない。【庄司哲也】

毎日新聞 2008年12月29日 東京朝刊

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